Beat TERAO radio
By Beat TERAO
Beat TERAO radioAug 23, 2020
ポールウェラー総集編
Paul Weller – Fat Pop 還暦を過ぎたオヤジが選択したのは「ポップ
2021年発表。コロナ禍に作成された。2作連続の全英1位。
長いキャリアの中でも最も丁寧に作られた作品のひとつじゃないか。メロディと、アップデイトされたウェラーサウンドの水準がむちゃくちゃ高い。血潮滾るロックであり、職人的な「ポップ」である。両面において最高峰の作品だ。
プロデュースはウェラーとの相性が非常に良いJan "Stan" Kybert。スタンリーロード期のライブ感あるワイルドなサウンドと比べると、非常に親密で温かい音作りになっていて、これが聴いていると非常にハマる。この人とのコラボにハズレはない。サウンドはいつものウェラーチームで、温かい音からチームワークの良さが伝わってくる。
エレクトロなかっこよいサウンドでスタートする「Cosmic Fringes」でアルバムの成功を確信、ギターサウンドがかっこいいリア・メトカーフとのデュエット「True」、ファンク的なサウンドとトリッキーなベースラインがかっこいい洒落たタイトルナンバー「Fat Pop」、極めてブリットな素晴らしいメロディを持つ娘リア・ウェラーとの共作「Shades Of Blue」、浮遊感あるメロディがストリングスとうまく絡む名曲「Glad Times」、スタジオで一発録りされた軽快なファンクナンバー(このアルバムで一番好きだ)「Testify」、抑えを利かせたボーカルと間奏のサックスとギターがかっこいい「In Better Times」、名曲だらけだ。アルバムは、ウェラーの片腕スティーヴ・クラドックとの共作「Still Glides The Stream」(しびれる!)で幕を閉じる。
ウェラーの喉は、60歳を過ぎてから少し枯れてきてるが、それが新たな表現に繋がっている。枯れてくると、通常のアーティストだと、ブルースとかジャズとかアンプラグド的な方向に進みがちだ。特にウェラーは、ソロデビュー後しばらくR&Bやソウル色の強い渋いロックをやっていたため、そっちに進むものだと思っていた。しかし、還暦を過ぎたオヤジが選択したのは「ポップ」。それもこの完成度。40代のウェラーを観ていた人が今のこの音をどれだけ想像できたか。最高。ほんとかっこいい。
Paul Weller – On Sunset還暦のウェラーが年齢相応の落ち着きとモダンな感性を併せ示した大傑作
2020年、コロナ騒動の最中にリリースされたソロ15枚目の作品。
「As Is Now」「Saturns Pattern」など、バランスが取れた傑作で組んだJan Stan Kybertがプロデュースを担当。
達観した爺を演じた前作「True Meanings」と比べ、ウェラーらしいメロディや幅広い音楽性が復活し、ウェラーの歌声も年齢相応の渋さと演歌にならないポップさの二面性を兼ね備えた、キャリア屈指の完成度を誇る優れた作品だ。
スタイル・カウンシル時代の相棒、ミック・タルボットがボ・ディドリーのビートを下敷きとした小粋な「Baptiste」など数曲でハモンドオルガンを弾いているのも話題になった。
これまでのキャリアでチャレンジした様々なジャンルの音楽を、シンプルながら効果的な音の配置と音響でフューチャーソウル的にアップデイト、そして曲自体の完成度が非常に高く、何度も聴けるアルバムになっている。ウェラーの代名詞的なパンク的な「FIRE」を直接感じる曲は無いが、中に秘めた音楽的な野心は、しっかり燃え上がっているのがわかる。
静かに始まり捻くれていく「Mirror Ball」、ビートが心地良いご機嫌な「Baptiste」、ウェラー流フューチャーソウルの金字塔「Old Father Tyme」、落ち着いたトーンで達観したボーカルに静かな炎を感じるアルバムを代表する名曲「Village」、エレクトリックとR&Bの高い次元での融合「Rockets」など、キャラがたった良曲だらけだ。
ジャケットの曖昧な雰囲気が正直なんとも言えないが、ウェラーの複雑な心境を示したものなのだろう。
還暦のウェラーが年齢相応の落ち着きとモダンな感性を併せ示した大傑作だ。
193 Paul Weller – True Meanings 最も心を揺さぶられなかった作品のひとつ
18年発表。前作から約1年、短いインターバルでリリースされた。
アンプラグドっぽいアレンジで、内省的な曲が多く、ウェラーとしては異色作だ。曲によってはストリングスが絡んだり、ジャジーなナンバーもある。60代となったポール・ウェラー、年齢相応の落ち着きと、渋さを纏った作品だ。UK2位。
「Bowie」はタイトルそのまま、デヴィッド・ボウイに捧げた曲。シンプルな歌詞でボウイに感謝する。なかなかグッとくる優しい歌だ。
個人的にはキャリアの中で最も心を揺さぶられなかった作品のひとつだ。リラックスした感じ、レイドバックしたような感じが正直合わない。爺っぽい音楽でも、気持ちが乗っていれば良いのだが、「HEAVY SOUL」が感じられないのだ。00年代のキレのないカバーアルバム「Studio 150」と同じような緩さ、脇の甘さ。
ウェラーに求めるのはこれじゃない。前作が洒落たロックアルバムだったので、どうしてこの路線に進んでしまったか残念でならない。
THE JAMの「カーネーション」「イングリッシュローズ」が好きな人には堪らないアルバムじゃないか。
192 Paul Weller – A Kind Revolution ベテランとしての成熟・気概を感じるロックアルバム
2017年発表。ソロ13枚目。英国5位。
前作のセッションで残った2曲「Woo Sé Mama」「One Tear」はジャン・スタン・カイバートの共作で、他のクレジットはウェラーのみ。更に久しぶりにセルフプロデュース。マルチプレイヤーのアンディ・クラフツ(the moons)、ドラムのベン・ゴルドリエらお馴染みのウェラーチームが中心になってプロダクト。
セルフプロデュースの場合、質が落ちるアーティストもいるが(典型的なのがマッカートニー御大)、前作と同等、あるいはそれ以上の内容になっているのが頼もしい。
ソウル、R&B、ゴスペル等、自身のルーツにサイケデリックなエレクトロニック風味を加えた感じ。ドクター・ジョン的な雰囲気があるものも含まれていることから、スタンリーロード期の面影さえ感じられる。
アルバムは、成熟したお洒落なソウルナンバー「Woo Sé Mama」で幕を開け、この時点で成功を確信できる。「Long Long Road」はウェラーの十八番のソウルバラードで、スタンリーロード期にタイムスリップしたようだが、歌声はバージョンアップされている。「She Moves With The Fayre」はロバート・ワイアットが歌とトランペットで参加し、これもサイケ風味がブレンダンの音作りを思い出させる。「One Tear」はボーイ・ジョージが参加。同窓会みたいな賑やかさがあるファンクナンバーだ。「The Cranes Are Back」は洗練されたゴスペル。かっこいい。
政治的なメッセージは込められていないようだが、アルバム全体から混迷する世界への怒りも(なんとなく)感じられる。気迫と、ベテランとしての成熟、気概、一箇所に留まらない音作り、これらが高いレベルで融合している作品だ。
やはりサイモン・ダイン期の混沌、完成度の低さが勿体ないと思ってしまう。
191 Paul Weller -Saturns Pattern 2010年代のウェラーを代表する傑作
15年発表のソロ通算12枚目。
00年代に入ってから出番が多かったサイモン・ダインではなく、「As Is Now」で組んだJan "Stan" KybertとAmorphous Androgynousがウェラーと共にプロデュース。作曲のパートナーも、Jan "Stan" Kybertに替わった。
ポール・ウェラーはコラボレイター次第で方向性が替わるチェンジングマン。自分の方向性に合ったコラボレイターを選んでいるのかもだが。
05年ぐらいからのハズレ曲の多さが改善され、ソングライティングの質がぐっと高まった。個人的にはサイモン・ダインとの共作曲がいまいち合わなかった(アイデア勝負の曲が多い)ので、この変化は諸手を挙げてウェルカム。
景気の良いウェラー流王道ロックナンバー「White Sky」、軽快なリズムと広がりのあるメロディーが素晴らしい「Saturns Pattern」、お得意の所信表明的な名曲「Going My Way」、浮遊感のあるメロディも良いが音像も素晴らしい「I’m Where I Should Be」・・・良い曲ばかり。
10年代のウェラーの作品では一番完自分の耳に合う。
良いメロディと、長いキャリアで辿り着いたウェラーの歌、そして時代を踏まえたサウンドのバランスが非常にハマってる傑作だ。
タイトルがいまいちピンとこなかったり(困難を乗り越えるって意味?)、ジャケットがロック的では無いので、入り込みにくい作品だと思う。内容とのギャップは相当デカい。損している。
190 Paul Weller – Sonik Kicks
2012年発表。全英1位。日本ではメディアに取り上げられることが少なくなったウェラーだが、実はUKチャート上ではアルバムが連続で1位を獲得し90年代以上に成功している。
このアルバムにはブラーのグレアム・コクソン、ノエル・ギャラガー、元ストーンローゼズのアジズ、ショーン・オヘイガンらが参加。プロデュースはウェラーとこの頃の片腕サイモン・ダインで、このコンビのピークといえる作品だ。
2010年から禁酒をスタートしたウェラー。
禁酒が、沈み込むようなサウンドから開放的でアッパーな音に変貌していった要因のひとつかもしれない。
ジャケットから感じるカラフルさがアルバムのトーンに繋がっている。当時のノエル・ギャラガーのソロにも近いハンマービートとUKギターロックを組み合わせたようなサウンド。その上で結構やりたい放題やっている。
ウェラーのこれまでのキャリアの中だと、音の質感や歌い方、曲調が「サウンド・アフェクト」「ザ・ギフト」に近い感じ。JAM後期もモッズやパンクから開放され自由にやっていた。
00年代後半から10年代にはかけてのウェラーは、スティーブ・ホワイトのリズムから自由になったことで、60年代〜70年代のモッズやビートルズ、スティーヴ・マリオットらの枠から飛び出し、自分の好きな音を思うままに鳴らしている。多分、このモードこそが本来のウェラーなんだろう。
ただ、個人的にはこのアルバムの落ち着きのない音が合わないのと、アイデア一発の曲作りの甘さが気になって仕方ない。家族に捧げられた「Be Happy Children」ぐらい丁寧に作ってほしい。
JAMから聴いている永年のファンには合う作品かと思う。
189 Paul Weller – Wake Up The Nation
2010年発表、10枚目のソロアルバム。全英2位。
前作でまたひとつキャリアの頂点を越えたウェラー。成功したスタイルをあっさり捨て去り、長いキャリアの中でも抜群にアグレッシヴなアルバムを完成させた。
元ジャムのベーシスト、ブルース・フォクストンとの共演も話題となった。ELOのベブ、ケビン・シールズらが参加。前作から出番が少なくなったスティーヴ・ホワイトはついに参加していない。これまでのウェラー独特のリズム感が放棄されたのは、このあたりに原因があるのかもしれない。
プロデュースは中期以降おなじみとなったサイモン・ダインで、全ての曲をポール・ウェラーと共作している。
父でマネージャーだったジョン・ウェラーが亡くなり、自身も50代を越え何か思うことが合ったのかもしれない。
アイデア一発、曲の整合感とかバランスとか無視したような曲が多く、バンドで揉んだ感じはない。また、長年ウェラーの特徴となっていたトラフィックやスモール・フェイセズといった先人たち、ビートルズの影響さえも表面的には感じることが難しい。
そうすると駄作か、となりそうだが、アグレッシヴなトーンで統一されウェラーとしての実験性に富んでおり面白い作品になっているのが流石だ。
前作に引き続き沢山の曲が収められているが、なかでもウェラーのボーカルとメロディが良い「No Tears To Cry」、スタジアムアンセム系の「Find The Torch, Burn The Plans」ケヴィン・シールズとのコラボ「7 & 3 Is The Strikers Name」が際立って良い。
ただ、曲が多すぎる感じがする。10曲ぐらいに絞れば印象が違っていたかも。
なぜかspotifyに入っていない、謎のアルバムでもある。
188 Paul Weller – 22 Dreams
08年発表のソロ9枚目。
ウェラー初の2枚組(LP)。ノエル・ギャラガー、ジェム・アーチャー、グレアム・コクソン、リトル・バリー等幅広いゲストも話題になった。
プロデュースはポール・ウェラーとサイモン・ダイン、スティーヴ・クラドックら。ソングライティング、歌声、プロダクション、全てにおいて肩の力が抜け、自然体のポール・ウェラーを堪能できる00年代の傑作で、UK1位。評論家のウケも良かった。
音作りにサイモン・ダインが入っているため、全体的に整理されたクリアなサウンドだ。90年代から00年代前半のサウナのもわっとした空気のような熱苦しさはなく、河原の側道でのランニングぐらいの熱量で統一されている。曲の輪郭がくっきりと分かる感じ。
2枚組ということもあり、ポール・ウェラーの「ホワイトアルバム」「メインストリートのならずもの」とも言える。ひとつひとつの曲が粒揃いで、全ての時期のポール・ウェラーを感じることができる。70年代後半からのウェラーのキャリアの総括になっていて、つまり「UKロックとは」の答えのような作品だ。そうそう、ジャムのスティーヴ・ブルックスが参加したのも話題になった。
両A面シングル「All I Wanna Do (Is Be With You)」、「Have You Made Up Your Mind」はアルバムの中でも出来の良い曲。ソロ初期のウェラーを軽やかにした感じだ。リラックスした歌声と広がりを感じる演奏が素晴らしい。
個人的には長年地味と感じていた作品で聴き込めていなかった。派手だった前作「AS IS NOW」との落差が大きく、アルバムに入り込むきっかけの曲が見つからなかった。アルバム発売から10年以上経ち、それぞれの曲が自然に入ってくるようになってようやく良さがわかった。08年当時の余裕がない生活環境も影響していたかも。今は良い作品だと思う。
187 Paul Weller – As Is Now
05年発表のソロ8枚目。全英チャート4位。
前作と同様、ジャン・スタン・カイバートのプロデュース。
「スタンリーロード」あたりの奥行きのある音とは異なり、ひとつひとつの音をクリアに慣らして、ジャム時代を彷彿とするシンプルでロックな音作りになっている。
シンプルなメロディーとアイデア豊かなコード進行を持った曲が多く、アルバム一枚飽きることなく聴ける。
鳥肌もののコード進行がかっこい最高のオープニングナンバー「Blink And You'll Miss It」、シングルカットされた切れの良い「From The Floorboards Up」、ロックバージョンの「ザッツ・エンターテイメント」なコード進行を持つ「Come On / Let's Go」、UKロックっぽい「Here's The Good News」、ワンダフル・トゥナイト的な凄い歌詞の「I Wanna Make It Allright」、素朴な「To The Start Of Forever」、素朴なスタートからの盛り上がりがかっこいい「Fly Little Bird」など、名曲ばかり。成熟したコンポーザーとしての実力を見せつける。
6作目「イルミネーション」と同様、若返った印象。低迷期を脱した第二期ウェラーのシンプルでわかりやすい傑作だ。
186 Paul Weller 若干ズレた選曲の凝ったカバーアルバム「Studio 150」
04年発表。V2レーベル移籍第一弾はカバーアルバム。全英2位。アルバムタイトルはアムステルダムの録音スタジオ。
前年の03年にレア曲やリミックス、B面曲で構成された3枚組コンピレーションアルバム「Fly on the Wall: B Sides & Rarities」が出ていて、ディスク3がまるごとカバー曲だった。こちらは「Feelin' Alright」「Black Sheep Boy」「Sexy Sadie」等、ビートルズや60〜70年代のクラシックロックの名曲が収められている。ベン・ハーパーの「Waiting On An Angel」なんてのもあって相当楽しめた。
シンプルに原曲をカバーしている「Fly on the Wall」と比較し、「studio150」は凝ったアレンジで丁寧に作られている。これがハマっているニール・ヤングの「Birds」ブルー・アイド・ソウルな「Wishing On A Star」ジル・スコット・ヘロン「the bottle」は素晴らしい出来。一方、カーペンターズの「Close To You」オアシスの「One Way Road」はひねりすぎて原曲の良さを消している。
全体的にスタイルカウンシル的、フリーソウル的なのだが、前後の作品の文脈からするとどうも整理がつかない作品だ。当時のインタビューで「みんな意外に思うだろう、ビートルズもスモール・フェイセズもフーもキンクスもモータウンも入っていないからな」的な話をしているが、聴き手のウェラー像とちょっと違うというか。その後全くこの路線でやっていないし。
キャリア中最もクリーンでロック的ではない作品で、この方向で成熟していくのだと当時は思っていた。そっちに進んでほしかったかも。
185 Paul Weller 新たなサウンドで軽やかに。「Illumination」
02年発表。ソロ6作目。全英1位。
長年サウンド面をサポートしてきたブレンダン・リンチと離れ、モッズのクラブシーンで活躍していたサイモン・ダイン(Adventures in Stereo→Noonday Underground)とコラボレーションした作品で、ソロ前期とは明らかに音が変わっている。
スタンリーロードやヘビーソウルの重厚な感じから、良い意味で軽く、ひとつひとつの音がクリアな聴きやすいサウンドに変わった。
前作にも少し変化の兆しがあったが、スタジオから外に出て陽光を浴びて健全に作ったような感じだ。
サウンドとともにアレンジも明るく明確になり、軽やかな「Leafy Mysteries」や、ノーザン・ソウルなブラスアレンジが小粋な「It's Written In The Stars」からはスタイル・カウンシル時代の軽さも感じられる。サイモン・ダインとはこの後もタッグを組む。
アルバムのハイライトは「One X One」で、当時OASISのメンバーだったノエル・ギャラガーとゲム・アーチャーが参加している。
二人の存在感は皆無だが、ウェラー節が炸裂する佳曲だ。
「Call Me No.5」はステレオフォニックスのケリー・ジョーンズとのデュエット。円熟味を帯びたスティーヴ・ホワイトのドラムを中心とした渋めのサウンドを舞台に二人ののど自慢が一騎打ち、という構図がなかなか楽しい曲だ。
「Standing Out In The Universe」はOASISっぽい雰囲気のビッグな曲で、アルバムの後半を盛り上げている。
ソロ5作で築き上げたポール・ウェラー・サウンドを解体し、スタイル・カウンシル時代の軽さを交えて組み立て直すことで改めてウェラーの良さを押し出すことに成功した。ソロ第二期のスタートを飾る会心の一枚だ。
184 Paul Weller – Heliocentric
90年代を浮き沈みの中サヴァイブしたっウェラーが00年に発表したソロ5作目。全英2位。
ジャケットのリラックスした佇まいがかっこいい。
前作のラフな作風を引き継いでいるが、エネルギーは抑えめ。アコギやニック・ドレイクの諸作で有名なロバート・カービイのストリングスが華を添えている。ウェラーの中でも最もフォーキーでレイドバックした作品だ。
偉大なる先達ロニー・レインに捧げた重厚な「He's The Keeper」はウェラーのクールなボーカルと重いドラムがかっこいいモッズな佳曲。娘に捧げた「Sweet Pea, My Sweet Pea」はジャケット並にリラックスしたこのアルバムを代表する曲だ。緩い曲が多い中で、「There's No Drinking, After You're Dead」は緊張感あるロック的な曲。
正直煮詰まり感がある過渡期のアルバムだ。
ハイクオリティだった「スタンリーロード」の面影はここにはない。前作は勢いでクオリティをキープしたが、さすがのウェラーもテンションを持続し緊張感のある高品質なアルバムを作り続けられなかった。
もう少しメロディを練ったりアレンジに幅をもたせれば良い作品になったかと思う。息切れ感を感じる。
この作品を最後にブレンダン・リンチのプロデュースから離れることになる(23年のFAT POPで復活)。ソロ第一期の終了だ。
183 ポール・ウェラー、一番良く聴いた作品!「Paul Weller – Heavy Soul」を語る
Paul Weller – Heavy Soul
97年発表。ソロ4作目。全英2位。
繊細なプロダクションが光った前作とは対照的に、アグレッシヴでライヴ感の強い作品。メンバー四人がスタジオで目を合わせながら録音した感じが伝わってくる。
アレンジも、前作の高級感ある凝ったものから、至ってシンプルに、オルタナギターロックやパンクを彷彿とさせるものとなった。全英シングルチャートで5位まで上昇しソロキャリアハイとなった「Peacock Suit」はその筆頭だ。
モッズのメンタルを感じる『Friday Street』やシンガロングなコーラスを持つ『Mermaids』、ソウルを昇華した「Up In Suzes' Room」など、良いメロディのポップな曲もあるが、全体としてはキャリア史上最もゴツゴツしたロックな作品だ。ジャム時代から引用を巧みに取り入れてきたが、それらを消化した上で、内から沸き立つ自分の衝動を、そのまま叩きつけたような感じ。バンドのデモをそのまま発表したかのような荒っぽい感じが魅力だが、ストレートな作り方は良くも悪くも大先輩ポール・マッカートニーのソロ作のようだ。
作り込まれた前作とは異なり、内なるパンクというか、自分のソウルを叩きつけた感じが魅力的なアルバムだ。
個人的にはウェラーの中で一番よく聴いた作品だが、人によって好き嫌いが分かれそうだ。
182 ポール・ウェラー代表作「スタンリーロード」を語る!
Paul Weller – Stanley Road
95年発表のソロ3作目。英国では1位。
ウェラーの故郷に由来するアルバムタイトルは、ビートルズの最終作を彷彿とさせ、アルバムジャケットのコラージュはサージェントペパーのアートワークのデザイナーが作成するなどビートルズへのオマージュが当時のウェラーのポジションと自信を伺わせる。文句なしに代表作のひとつだ。
ただ、初心者におすすめする作品ではない。ELOのリフをダイナミックなロックに変貌させたウェラーの代名詞とも言える「The Changingman」、熟成したワインのようなバラード「You Do Something To Me」、2作目の延長線上にあるかっこいいR&B「Broken Stones」、ソロのポールマッカートニー的なバラード「Wings Of Speed」といったわかりやすい曲はあるものの(こうやって取り上げると十分かも・・・)、全体的には前作以上に渋く玄人好みするアルバムだ。ドクター・ジョンを筆頭とするニューオーリンズ的なリズムに(「I Walk On Gilded Splinters」を取り上げていて、アルバムを印象付けている)、スモール・フェイセズを通り越し、ブラックベリーズを伴った頃のスティーヴ・マリオットがビートルズの影響を受けてR&B調の曲をやっているような感じ。そして、オリジナル曲の骨格は他のどのアルバムよりもビートルズっぽさを感じる。シンプルな良い曲を、アレンジでわざと深く、難しくしたような。
プロデュースはブレンダン・リンチ。おそらくリンチにとってのベストワークではないか。前作の密室的な暑苦しさは抑えられ、一つ一つの音がクリアになりよりフレンドリーな音になっている。随所で聴けるダブ的なサウンド処理も隠し味的に良い。ギターソロの音もリアルで、まるでスピーカーの前で弾いているかのようだ。ここまでギターの鳴りが良い作品をあまり知らない。一方でドラムを中心にロック的なダイナミズムは増していて、非常にパワフルな音になっている。キャリア最高の素晴らしいサウンドだと思う。
年が経つのと比例して良さが高まっている。この先も間違いない。一生聴き続ける。
181 Paul Weller – Wild Woodを語る!!
Paul Weller – Wild Wood
93年発表のソロセカンド・アルバムで代表作の一枚。全英2位とチャートでも成功し、現在に至るポジションを確立した。
このアルバムが出た93年、ブラーが「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」を発表。翌年にはカート・コバーンが亡くなり、こここから数年ブリットポップが一世を風靡する。ポール・ウェラーはモッズゴッドと崇められ、シーンの中心にいたが、音楽性は一線を画していた。
前作のトラフィック、スモール・フェイセズ経由のブラック路線を一層突き詰め、ウェラー流R&Bサウンドを築き上げている。アルバム当時ウェラーは30代中盤で、今考えれば年齢不相応な渋さだ。「Has My Fire Really Gone Out?」なんて歌をいなたいサウンド乗せてツバを撒き散らしながら歌っている。いやいや。
プロデュースはお馴染みブレンダン・リンチ。他のプロデュース作品と比べて密室的でサウナのように熱がこもっている感じのサウンドになっている。これは好き嫌いあるかも。ただ、ここまで熱量のある演奏をダイレクトに閉じ込めた手腕は凄い。他にこういうサウンドは聴いたことが無いレベル。
ウェラーの脇を固めるのは、スタカン時代より腕が上がったように聞こえるドラマースティーヴ・ホワイト、ウェラーの片腕、OCSのスティーヴ・クラドック。キャリア最高峰の気迫十分の演奏だ。
アルバム冒頭の3曲が「Sunflower」「Can You Heal Us (Holy Man)」「Wild Wood」と非常に熱苦しい名曲連打。一気にボルテージを上げた後、中盤で三十路のパンクの在り方を示す「Has My Fire Really Gone Out?」、インスト曲なども交え、最後はDee C. Leeとの間に生まれた二人の子供NathanielとLeahに捧げられた「Moon On Your Pyjamas」で優しく終わる。アルバムとしてのまとまりも素晴らしい。
このアルバムと同時期のシングル「Hung Up」も相当かっこいいビートルズ的な名曲。TVKで初めてMVを見たときのことを今でもはっきり覚えている。
余談だが、この時期のウェラーの迫力あるサウンドでポール・マッカートニーが歌ったらどうなるかな・・・と妄想を頻繁にしている。マッカートニーは緩すぎるんだよな。
ウェラーと、90年代UKロックを代表する傑作。個人的にもいろいろ思い出が詰まった生涯聴き続ける一枚だ。
180 ポール・ウェラーの1ST「paul weller」を語る!!
92年発表のソロ1ST。
「遅すぎた青春」スタイル・カウンシルの崩壊後、レーベルから首を切られたウェラーは、「ポール・ウェラー・ムーブメント」を立ち上げドサ回りから再起を図る。
模索の上辿り着いたのは、スモール・フェイセズ、トラフィックといった自身のルーツだ。
179 秋。9月に絶対聴きたい曲。
178 ジェリーフィッシュと俺
The Rolling Stones - Angry
- 9月6日にyoutube生配信で生き残りの3人が10月20日にアルバムをリリースする旨を発表。新作のMVも披露された。
- ローリング・ストーンズらしいリフともっさりしたリズムがかっこいい。
- 過去のストーンズが切り取られたMVもらしさ満開で面白い。
- 80近い老人なのにかっこいい。
- 俺の中でジョンスペブーム。
- 「アクメ」までは90年代後半らしいリズム感とガッツリしたギター、ジョンのソウルフルな歌が絡み合ってむちゃくちゃかっこいい。
- 2000年のサマソニでトリだったが取り前のジェイムス・ブラウンが長過ぎてジョンスペのステージが時短になったことを今でも思い出す。逆らえないわな。
- ルー・バーロウは90年代を代表するソングライターだ。90年代後期を代表する映画「kids」のテーマソングだったナチュラルワン。最近配信サービスで聴けるようになった。アンクルのリミックス、本家を喰うほどかっこいい。
- ジェリーフィッシュは2作しかアルバムが出てないが世界観が完成された良いバンドだと思う。今だとLGBTQの範疇で語られそうだけど。
- ビートルズチルドレンとして取り上げられることもあるが、個人的にはあまりビートルズぽさは感じない。クイーンやチープトリックなどビートルズの影響を受けた支流の先に位置するバンドだ。
- ビートルズを感じるバンドってそんなにはいない。トッド・ラングレン、XTC、エルヴィス・コステロ、ソロのポール・ウェラー、中村一義、アイアン&ワイン、エミット・ローズ、ELO、トム・ペティあたりか。
- クソ暑かった夏もさすがにそろそろ終わりそうだ。
- 9月はこれからグリーン・デイばかり聴く。みんなそうだと思う。
The Jon Spencer Blues Explosion - Memphis Soul TypecastSoul Coughing - Bus to BeelzebubFolk Implosion - Natural One - UNKLE RemixJellyfish - New Mistake
Elton John - Don't Go Breaking My Heart
Queen - You're My Best Friend - Remastered 2011
Cheap Trick - SurrenderDawes - I Love
230915 terao talk ベックボガードアンドアピスの4枚組ライブ盤配信開始!
230913寺尾talk ジョンスペブーム
暑い
177 夏ウタ特集!
176 フジロック2023初日は良かった
Blur - Best Days - 2012 Remaster
Wham! - Club Tropicana - Balearic Breeze Remix
Fatboy Slim - Ya Mama (Push the Tempo) - Moguai Remix
Stardust - Music Sounds Better With You
The Chemical Brothers - Live Again (feat. Halo Maud)
The Rapture - How Deep Is Your Love?
The Jesus and Mary Chain - Blues From a Gun
寺尾talk 「Matthew Sweet – Altered Beast」
124 80年代特集
Tears For Fears - Sowing The Seeds Of Love
Crowded House - Better Be Home Soon
Phil Collins - Another Day in Paradise - 2016 Remaster
Queen - I Want To Break Free - Remastered 2011
寺尾talk総集編 トラヴィス、キング・クルール、エリック・クラプトン、ヨ・ラ・テンゴ、レオン・ラッセル、コールドプレイ
トラヴィス、キング・クルール、エリック・クラプトン、ヨ・ラ・テンゴ、レオン・ラッセル、コールドプレイ
寺尾talk 「Small Faces – Ogdens' Nut Gone Flake」
寺尾talk「George Harrison - Gone Troppo」
“今聴くと、ジョージの「怠惰な日常からの脱却と人生を楽しむ」圧倒的にポジティヴな個性が、リゾート音楽と交差し結実した、唯一無比の「気楽なロックアルバム」だと思う。ジョージ独特の多幸感に溢れた雰囲気が存分に楽しめる。” https://offsidedrug.hatenadiary.com/entry/2023/06/03/190132
寺尾talk「Belle & Sebastian – The Boy With The Arab Strap」
https://open.spotify.com/album/0PnuQg8OK4KoOPrwhgyKRQ?si=X9iCZQ4rTDyzQtkDo4Yrkg
175 コステロの1st「my aim is true」特集
Mercury Rev - Opus 40
Beck - Think I'm In Love
Pavement - Cut Your Hair
Quasi - Doomscrollers
Elvis Costello - Welcome To The Working Week
Elvis Costello - Watching The Detectives - Single Version
Elvis Costello - Alison
The Jackson 5 - I'll Be There
寺尾talk 「King Krule – King Krule」
寺尾talk 「Yo La Tengo – This Stupid World」
174 ロック秘宝館特集 「のぞいてごらん・・・」1994年田中宏明氏による最高のコンピを特集
Simon & Garfunkel - Cecilia
Norman Greenbaum - Spirit In The Sky
The Association - Six Man Band
Badfinger - Know One Knows
Tony Joe White - Polk Salad Annie
Allen Toussaint - Soul Sister - Remastered Version
Paul Williams - Someday Man
Ry Cooder - Boomer's Story
寺尾talk 「Fatboy Slim – On The Floor At The Boutique」
173 フジロック、アーティスト揃いつつあり!さらばボビー・コールドウェル!AOR特集。
The Supremes - You Can't Hurry Love - Mono
George Harrison - Love Comes To Everyone - 2004 Remaster
The Cardigans - Sick & Tired
The Wannadies - You And Me Song
Bobby Caldwell - What You Won't Do For Love
The Isley Brothers - Footsteps in the Dark, Pts. 1 & 2
Player - Baby Come Back
Delegation - Oh Honey
Wilco - Red-Eyed and Blue - 2017 Remaster
寺尾talk 「Coldplay – X&Y」
寺尾talk benny sings young hearts
寺尾talk Eric Clapton – Money And Cigarettes
172 春に合う曲 ルーファス・ウェインライト、ノラ・ジョーンズ他
The Veils - Guiding Light
Phoenix - After Midnight (feat. Clairo)
Bakar - Pit stop
Feist - Hiding Out In The Open
Rufus Wainwright - Cigarettes And Chocolate Milk
Ben Folds Five - Alice Childress
Norah Jones - Sunrise
Billy Preston - I've Got A Feeling - Remastered 2010
171 またもやロッド・スチュワート特集
Deep Purple - Gettin' Tighter
Teenage Fanclub - I Don't Want Control of You
Big Star - Thirteen
Matthew Sweet - Not When I Need It
Rod Stewart - Da Ya Think I'm Sexy?
Rod Stewart - I Don't Want to Talk About It - 2008 Remaster
Rod Stewart - Handbags & Gladrags
A$AP Rocky - Everyday
寺尾talk 230317「Leon Russell – Leon Russell And The Shelter People」
Leon Russell – Leon Russell And The Shelter Peopleについて語る
170 Rod Stewart – Vagabond Heart 特集
the bird and the bee - Again & Again
M.I.L.K. - Right Here (feat. Benny Sings)
Men I Trust - Ring of Past
Rod Stewart - The Motown Song (with The Temptations)
Rod Stewart - Rhythm of My Heart
Rod Stewart - You Are Everything - 2008 Remaster
Rod Stewart - Have I Told You Lately - 2008 Remaster
Rod Stewart - Downtown Train - Early Version
The Good Life - Night And Day
169 バートバカラック俺の3曲。
terao talk 「Stereophonics – Word Gets Around」
寺尾talk 230219ネットの記事から適当に
ネットの記事から適当にトーク
168回 JEFF BECK追悼
Jeff Beck - Shapes of Things - 2005 Remaster
Donovan - Barabajagal (with Jeff Beck Group)
Jeff Beck - I Put a Spell on You (feat. Joss Stone)
Beck, Bogert, Appice - Sweet Sweet Surrender
Imelda May - Black Tears
Jeff Beck - Hi Ho Silver Lining
Jeff Beck - A Day in the Life - Live