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By YY Music Channel

プロのフルーティストとピアニストが好きな曲を好きに演奏して好きに喋り倒すチャンネル。
毎週水曜深夜か、木曜のゆるふわ更新。クラシックはもちろん、あらゆる音楽を端から端まで食い尽くしていきましょう!
演奏曲のリクエストはTwitterにて、#yymcl​ または #YYMCL​ をつけて呟いてね。人類皆音楽雑食!

■フルート 竹森ゆきえ
桐朋学園大学音楽学部卒業。同大学研究科を経て渡仏し、フランス国立サンモール地方音楽院を満場一致で卒業。
フランスにて、クレドールコンクールソロ部門最高位を受賞する他、様々なコンクールに入賞を果たす。
2018年、庭に遊びに来ていた愛嬌のあるかわいい野良猫を家族に迎え入れる。
2020年、新しく迎え入れた保護猫に壁という壁で爪研ぎをされ、家を破壊されるも幸せに暮らしている。

■ピアノ 金井裕
桐朋学園大学音楽学部を卒業後、パリ地方音楽院に入学。DEMSを取得し、リュエイユ=マルメゾン地方音楽院に入学。留学中はソリスト・室内楽奏者としてパリを中心に活動。フランス・ブレストにて第17回ブレストピアノ国際コンクール第3位。帰国後はソロ、室内楽、子どものための企画公演、ゲーム音楽祭に参加するなど幅広い活動を行っている。
今欲しいものは体力と午前中。それなりに苦労してきたような気もするが何でも忘れるので毎日幸せに暮らしている。
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#102 果てなきオルガニスト人生、ヴィドール!…の、フルート音楽

YYMusicChannelApr 12, 2024

00:00
40:25
#102 果てなきオルガニスト人生、ヴィドール!…の、フルート音楽

#102 果てなきオルガニスト人生、ヴィドール!…の、フルート音楽

Today’s List◾️ Charles-Marie Widor: Suite op.34 -- シャルル=マリー・ヴィドール: 組曲 op.34

言い忘れてしまいましたが、長年このチャンネルをご愛聴くださっている方は薄々お気付きでしょう…この曲もまた、フルート界の神、タファネルに捧げられているということに…

フルートにはタファネルが、オルガンにはカヴァイエ・コルが、そしてヴィドールがいる時代でした。
ヴィドールはあまりにもオルガン一筋のキャリアであったせいか、作曲家としては一般的にそこまで知名度は高くありませんが、後年にはパリ音楽院の作曲科で教鞭を取り、オネゲル、ミヨーなどの作曲家を輩出し、後にナディア・ブーランジェが指導者として名を馳せたアメリカ音楽院でも、更には海外でも数多くの作曲家の卵たちに教えました。そしてそして、私たちの推し、リリ・ブーランジェの師でもあります。

オルガニストとして知らぬ者はいないほど輝かしい人物であっただけでなく、どれだけ作曲家としての力に信頼を寄せられていたか、よくわかる経歴です。
パリ音楽院の学生として学んでいるうちから華々しく活躍していく後の世代の作曲家とは少し趣が違いますが、確かに重要な役割を果たした音楽家のうちの一人です。



Apr 12, 202440:25
#101 夏休み明け、それは人生のリハビリ

#101 夏休み明け、それは人生のリハビリ

Today's List◾️ Lili Boulanger:Nocturne/Cortege -- リリ・ブーランジェ: ノクチュルヌ/行列

夏休みと冬眠が合体しました!もう筋肉が衰えてヨボヨボです。
ポッドキャストの作業に関する全ての記憶を失った私たちはレコーディングのセッティングに焦り、遠隔トークのセッティングに涙し、全て終わる頃には深夜、クッタクタ。
こんな大変なわけなかったよね…?
101回目の初心者です。

そもそもコロナ禍で練習の必要に迫られなくなった私たちが、サボりすぎて危機感を感じ、練習を継続するために始めたようなチャンネルだったのですが、仕事が戻ってきてもいつの間にか音楽筋力維持のために不可欠な存在になっていました。
したがって活動中のリハビリで得た筋力を、休止中に失い(何故)、そして再開とともに再リハビリ…再リハビリ????そう、今は「リ・リハビリ」中なのです(??????)人生は、リハビリとリ・リハビリのエンドレスループなのです(???????????)

果たして待ってて下さった方がいらっしゃるのか自信はありませんが、引き続き、聴けば楽しい!チャンネルを目指してまいります。

今後は不定期更新となりますので、X(twitter)@YY_MusicChannel をフォローして、お知らせを待ってくださいね❤️❤️
今後ともどうぞよろしくお願い致します!
Mar 09, 202424:22
#100 演歌最終回!今こそ浴びたい寒い風、津軽海峡・冬景色【夏休み頂きます】

#100 演歌最終回!今こそ浴びたい寒い風、津軽海峡・冬景色【夏休み頂きます】

Today's List■ 石川さゆり: 天城越え/ 津軽海峡・冬景色


100回!祝!100回!

いやーここまで来られるとは思っていませんでした。大した努力もしませんで再生回数が爆伸びすることなどあり得ないのですが、それでも今聴いてくださっているあなた、あなたが居なければ随分前に放り出していたと思います。本当にありがとうございます。大好きです。いや本当に。


そ、し、て. . .

10/6(金)18:30開場、19:00開演 代々木上原けやきホールにて

竹森ゆきえ 金井裕 デュオリサイタル


もうスケジュールに入れて下さいましたか?!待ってます!!そうですよ!!ホールですよ!あなたが来てくれないとほんとガラガラですよ!!どうすんだ!!どうしよう!!!

チケットご購入のお問い合わせは、twitter…じゃなくて、改め X の私たちのアカウント(https://twitter.com/YY_MusicChannel)へ、DMを下さいませ!

または、トップの投稿よりQRコードを読み込んで頂けますとスムーズにご購入いただけます。


去年よりさらにグレードアップして、二人で様々な音楽をお届けできること、嬉しく思います。

それではどうぞ夏の思い出をたくさん作って下さいね!またお会いしましょうー!







Aug 16, 202327:32
#99 男も女も結局、心意気だ!演歌②

#99 男も女も結局、心意気だ!演歌②

Today's List■ 八代亜紀: 舟唄/ 梅沢富美男: 夢芝居

以前、昭和歌謡の特集を組みました(#33 昭和は失恋を歌い上げる)が、今回の3回に渡る演歌を録音していてちょこちょこ思ったのは、これは演歌なのか…?歌謡曲では…?ということです。

なんやかんやと真剣に歌い回しを相談しちゃったりして、こっちの方が演歌っぽいんじゃないか!なーんて盛り上がったりしている私たちですが、あんまり演歌の定義をわかっていません。
そこで調べてみたところ、演歌は歌謡曲の中の1ジャンルであって、歌謡曲の中で日本伝統の要素が強い(民謡的であったり、特定の音階を使っているなど)ものを演歌と呼ぶらしいです。つまり演歌は漏れなく歌謡曲であるというわけですね。どっちなんだ…などと思うこと自体が間違いでした。浅薄。

Jul 20, 202325:17
#98 横浜を都会っていう人なんていないよね?演歌①

#98 横浜を都会っていう人なんていないよね?演歌①

Today's List■ 五木ひろし: よこはま・たそがれ/ 石田あゆみ: ブルーライト・ヨコハマ


ちなみに同じ横浜住まいである私たちの家も近所と言えることは全くなく、免許のない金井が時間をかけて電車を乗り継いで竹森の家まで行くと、翌日ブッ倒れるくらい異常に負担のかかる旅となります。

あのつらさは、まさに演歌にうってつけ…

なーんて考えたりしていると、横浜市民が市内の人々とも、外界の人々とも、生涯交流を継続するにはかなりの労力が要されるということがわかります。港があろうとなかろうと、別れが多い町なのも当然ですね。

「横浜市内のアクセスを快適にして下さい」というやるせない心情を誰かが歌いあげたら、これこそ大ヒット、ご当地ソングになること間違いなしでしょう。



Jul 13, 202331:45
#97 大換気と美麗ステップ。ダマーズ、演奏会用ソナタ

#97 大換気と美麗ステップ。ダマーズ、演奏会用ソナタ

Today's List■ Damase: Sonate en Concert -- ダマーズ: 演奏会用ソナタ

こんな音楽は、馴染みがなくても一回耳にしたらフワーッと引き込まれて大好きになってしまうのではないでしょうか。
自分より前に生まれて活躍した作曲家のエッセンスは取りこぼさないというように、ダマーズの音楽には様々なフランス音楽の手法や精神が見受けられ、ふとした歌い回しにはプーランク、異国風味の取り入れ方にはミヨー、音のぶつけ方にはフランセなどの影響を感じられます。そんな歴史の受け皿としてのオープンな姿勢は、そのまま彼の作風として活写されていますね。
また、ハープ奏者の母はラヴェルやフォーレの作品を初演していますから、幼い頃から自然にそういった音楽に触れてきて、着実にルーツが形成されていったことでしょう。作曲においてはビュッセルの弟子でしたが、心の師はたくさんいたんじゃないでしょうか。ダマーズの音楽には20世紀のフランス音楽の魅力がパンパンに詰め込まれています。
Jun 29, 202331:39
#96 彩り豊かな歌心、うっとりロマンス。 サン=サーンス③

#96 彩り豊かな歌心、うっとりロマンス。 サン=サーンス③

CCSS■ Saint-Saens: Pavane de Proserpine / Romance op.37 -- サン=サーンス: オペラ "プロゼルピーヌ" より パヴァーヌ/ ロマンス op.37

実はたくさん書いていたサン=サーンスのオペラの中に、『黄色い姫君』という作品がありまして、これはプッチーニの『蝶々夫人』より30年も前に作られた、日本が舞台のオペラです(こちらも台本はルイ・ガレ)。当時は東洋趣味が大流行中、当然といえば当然の流れかも知れませんが、流石に情報のキャッチとアウトプットが早いなぁと感嘆してしまいます。

彼の音楽も演奏もコントロールの行き届いたものです。フルートにおいてはタファネル、ヴァイオリンにおいてはサラサーテというように、一流の演奏家との交流を経て考え抜かれた楽器に対するアプローチには、図書館でバッハやベートヴェンの楽譜を読み漁ってきた学生時代となんら変わりなく、自分に必要な情報を貪欲に求め続ける姿勢がよく現れています。

晩年、ベル・エポックへの芸術の流れにサン=サーンスが賛同しなかったことは残念だという見方もありますが、狂騒や偶然性を取り入れ始めた時代の音楽と、彼のコントロールが不可欠な音楽が乖離していくことは、ごく自然なことだったのかも知れません。

Jun 15, 202326:32
#95 派手な方といえばこれ!「死の舞踏」サン=サーンス②

#95 派手な方といえばこれ!「死の舞踏」サン=サーンス②

CCSS②■ Saint-Saens "Danse Macabre" op.40 -- サン=サーンス "死の舞踏" op.40


美術的モチーフとして人気だった『死の舞踏』を描いた絵画がどれもポップに見えるのは、単純にガイコツというビジュアルにちょっとひょうきんな印象があるからかも知れませんね。ヨーロッパにおけるガイコツは幽霊みたいなものだそうです。


ペストが流行った頃、死者がおびただしい数に上ったのは、ペストそのものに罹った人に加えて、看病する人や神に祈りを捧げる人、死体を処理する人、大黒柱を失って食べ物に困る人…そういった疲労に倒れた人の数も加えられることも原因にあるようです。それこそ「踊れば」ペストに罹らない、という噂まであったそう。

「死」と「踊り」をモチーフにした音楽といえばもう一つ、タランテラが思い浮かびますが、タランテラの場合、生きている人間が死ぬまで踊り狂う、というテーマなので、狂気から来る笑いや、恐怖、切迫感があります。それに比べて死の舞踏では、踊る者は既に皆死んでいます。鑑賞者に与える不気味さとは関係なく、踊る者には恐怖らしい恐怖がありません。単に朝が来れば各々、元いた墓場に戻るだけです。そういう事情が、こういった音楽にどことなく漂う呑気さや優雅さみたいなものの表現に繋がるのかも知れません。




Jun 07, 202328:60
#94 エグい振り幅の地味な方から始めます。サン=サーンス①

#94 エグい振り幅の地味な方から始めます。サン=サーンス①

CCSS①■ Saint-Saens: Odelette op.162 -- サン=サーンス: 叙情小詩 op.162


サン=サーンスは、パリ音楽院の教授にはなっていません。教育的な音楽の作曲に精を出すこともなく、「音楽的な」音楽ばかり作っていたことが、後世の音楽学生たちには演奏が難しかった一因かも知れません。しかしニデルメイエール音楽院で教鞭を取った時には、面白く、意義ある授業をする先生だったようです。


サン=サーンスがワーグナーの影響を受け過ぎる若手を危惧したというお話をしましたが、ちなみにドビュッシーは割と早い段階で脱ワーグナー宣言(?)をしています(しかしその後しばらく、彼の音楽にはやはり継続してワーグナーの影響が見られます)

フランスらしい、また作曲家独自の音楽を模索して足掻く中で、これという道をそれぞれ見つけるのがとても難しかった時代ですが、パリジャンであったサン=サーンスの音楽にはっきりとした哲学が軸として通っていたことは、振り返ってみればフランスにとって幸運であったといえるでしょう。

May 18, 202332:02
#93 ジョルジュ・ユーもやっとく!

#93 ジョルジュ・ユーもやっとく!

Today's List■ Gerges Hue: Fantasie -- ジョルジュ・ユー: ファンタジー


ガンダムは、オタク第二世代でした!

そもそもオタクの素養があれば二人とももう少し音楽オタクになっていたはずなので、まあ語ってもこの程度ですが、好きなものは好きだからということで…


さてコンクールもの最後は、東洋とギリシャ神話的な雰囲気を融合させたようなユーの世界でした。この曲だけが有名ということは、フルートの歴史の点から見るとやはり欠かせない重要なものを何か持っているということでしょう。フルートのきらめく音楽を押し出していくここ数週間でお届けした音楽は、演奏者には対してコンクールの役割を担っていながら、聴衆に対して演奏の楽しみ方を教えてくれるようなラインナップだったように思います。アニメも音楽も楽しみ方は色々ですよね。また次回からは別の楽しみ方をきっとご提案できるはず…と信じております!

May 05, 202342:31
#92 よく知らない人の曲もとりあえずやってみる!ルイ・ガンヌ

#92 よく知らない人の曲もとりあえずやってみる!ルイ・ガンヌ

FRENCH COMPOSERS④■ Ganne: Andante et Scherzo -- ガンヌ: アンダンテとスケルツォ

さてさてタファネルへの捧げ物を続け様にお届けしましたが、この曲は少し毛色が違ったような気がします。
ガンヌのオペラは今ではほとんど上演機会がありませんが、その数の多さから見るに、当時は気軽に観られるものだっただろうと思われます。まだ映像が普及する前の日常的な娯楽であったオペラは、かなり量産されるものでした。「誰もが楽しめる」という種類のものは実はそんなに発展していなくて、そこからはみ出したものが革新的な作品として後世に残り、ジャストフィットしたものが淘汰されていく運命にあります。 しかし現在に残らなかったといって、その時代に人々が最も楽しんでいたものが価値のないものかというと、そんなはずはないですよね。
この曲は運良く生き残ってくれた、誰でも心地よく、程よくドラマを感じられる、ジャストフィット型の一曲であったように思います。
Apr 20, 202323:39
#91 混ざる響きと離れる響きを操るんだ!エネスコ

#91 混ざる響きと離れる響きを操るんだ!エネスコ

FRENCH COMPOSERS③■ Enesco: Cantabile et Presto -- エネスコ: カンタービレとプレスト


エネスコのピアノ作品で知名度が高いピアノソナタの中で、その録音は同じくルーマニア出身のピアニスト、リパッティのものが一番有名でしょう。なんとエネスコはリパッティの名付け親だったそうです。優しい笑みを浮かべたエネスクと、その顔をちっちゃな幼児のリパッティが見上げている、二人の心温まる写真が今でも残っています。この写真では二人ともそれぞれヴァイオリンを抱えているのですが(エネスコがヴァイオリンを教えていたことは想像に難くない)、やがて格式高いピアニストとなったリパッティと一緒に演奏して残したエネスクのヴァイオリンソナタの録音は端的に言って、すごい名盤です。

優秀なピアニストが側にいるということは、作曲家にとってはもはや資質の一つとも言えるくらい重要なことだと思われますが、側にリパッティがいたことは、エネスク自身がピアノをよく弾けたことを除いても、彼の非常に自然な指運びを促すピアノの譜面の理由の一つでもあったことでしょう。


Apr 14, 202326:56
#90 101年の人生!実は偉人、ビュッセル

#90 101年の人生!実は偉人、ビュッセル

FRENCH COMPOSERS②■Busser: Prelude et Scherzo op.35 -- ビュッセル: プレリュードとスケルツォ

調べてみると意外と曲数は多く、どれも小曲ではありますが、作品番号だけで見るとビュッセルは100曲ほどは様々な楽器のために曲を書いていました。
コンクール向けに作られたこの作品の方がむしろ特殊な方で、彼の音楽はあまり華やかに振った方ではなく、ロマン派の陰や重みの匂いを漂わせながらも、ふと風向きが変わるようなフランス的な和声感を感じさせる作風です。この曲で言うと、そんな特性はプレリュードの方によく現れています。成熟していく時期とフランス音楽界が加速する時期が重なり、若い頃によく聴いた音楽とうまく調和させていったのでしょう。

101年も生きた人だ…!と思いながらwikipediaを開いてみると、そこにはあどけなさの残る半笑いの青年の写真が表示されます。厳しい髭面を想像していた私たちは拍子抜けして、何故だか笑い転げてしまいました。失礼な話だ…
Apr 06, 202322:57
#89 桜散る前に聴きたい、さくらのうた

#89 桜散る前に聴きたい、さくらのうた

Today’s List■ 福田洋介: さくらのうた/ 夜桜 -- Yosuke Fukuda: Sakura Song/ YOZAKURA

吹奏楽と聞くとどうしても青春のイメージを持ってしまうのですが、この2曲は大人になるにつれ覚えていく感情が込められているようです。 重なっていく時間を感じさせる音楽の中に、ときめきとも焦燥感とも思える何かが迫ってくる時、ああこれが春だと感じます。
桜が咲く期間は本当に短く、桜を見ようと思う間もなく春真っ盛りを迎えてしまう大人の方は珍しくないのではと思います。それでもこんな曲を耳にすると、忙しい日々の中にふと、ぽっかりと、桜吹雪の舞う空間が生まれることでしょう。

しかしやはり、今回のレコーディングは青春でした。約10時間部活少女のようになった私たちは、録り終えるやいなや疲労困憊でお互いを労うこともなく、スンッ…と解散しました。どんな時代も青春は桜咲く日々よりも短いものなのでした。
Mar 24, 202335:38
#88 タファネルはフルート界の神なのです。

#88 タファネルはフルート界の神なのです。

FRENCH COMPOSERS①■ Taffanel: Andante Pastlal et Scherzettino -- タファネル: アンダンテ パストラールとスケルツェッティーノ


というわけで、タファネルの音楽人生は非常に大局的でした。フランス楽壇の中心であったパリ音楽院管弦楽団、オペラ座管弦楽団両方の首席奏者を務めた後に、この二つとものオーケストラの指揮者も務めました。今ではフルーティストがオーケストラを指導する立場に就くことはあまりありませんが、彼の活動の歴史を辿ると、その仕事を全うしたことは自然な流れのように思えます。

まだまだ「新しい」楽器であったフルートを多用する作曲家たちの、フランス音楽が盛り上がってくる時代において、タファネルの存在は大変重要なものだったでしょう。

Mar 09, 202325:51
#87 モダンフランス最高だぁ。サンカンのソナチネ!

#87 モダンフランス最高だぁ。サンカンのソナチネ!

Today's List■ Sancan: Sonatine pour flute et piano -- サンカン: フルートとピアノのためのソナチネ 


お話した通り、この曲は1,2楽章間と2,3楽章間(そもそもこれらを「楽章」と呼ぶのかは定かでありませんが)が、それぞれピアノとフルートのカデンツによって繋がっています。カデンツというと元を辿れば協奏曲で使われていたもので、演奏者の即興的な要素が色濃く、それがテーマに収束されていく様子が鮮やかなものです。そんな技法がこの小さなソナチネという曲の中でも使われています。

 即興-テーマは大きな揺り戻しのようなものですが、フランス音楽において「揺れ」は重要な表現のうちの一つです。ドビュッシーが大々的に用いた、連続するテクスチャーの交代とでも言えるような手法は、揺れないテンポの中で揺れを再現できる発明だったと言えるでしょう。フランスの作曲家たちはその遺伝子を脈々と引き継いでいます。サンカンも例外ではありません。たくさんの小さな揺れが、この曲には詰め込まれています。

それら全てが即興とテーマという揺れに包括されたことによって、形式美の中に身を置きながらも、風や水といった不確かな感触を感じられる一曲となっています。

Mar 03, 202336:30
#86 テレマン②食事中の無伴奏ソロはさすがに気まずい

#86 テレマン②食事中の無伴奏ソロはさすがに気まずい

Today's List■ Telemann : Drei dutzend Klavierfantasien TWV33:27 emoll / Zwolf Fantasien fur flote solo TWV40:2-13 no.1 Adur, no.12 gmoll -- テレマン: チェンバロのための36のファンタジー TWV33 第3巻 第3番/フルートのための12のファンタジー TWV40:2-13 第1番、第12番


フルートのファンタジーにつけられた作品番号40というジャンルは「通奏低音のない室内楽」となっています。このジャンルには旋律楽器のアンサンブル曲なども含まれますが、フルート一本で演奏する作品であっても、室内楽(合奏、重奏)に分類されるというわけです。聞こえないアンサンブルが存在するという、旋律だけを演奏することの難しさが感じ取れますね。

ところでファンタジーという名を聞くと、咄嗟にそのままファンタジックなイメージ(邦題は「幻想曲」となります)を持ってしまうかもしれませんが、内実はいわゆるメルヘンなファンタジーとは少し趣が違います。

では何故そんな名前が使われ始めたのかというと、どうやらルネッサンスの頃には作曲家のアイデアを「神からの啓示」と捉えていたことから来ているようです。私たちが考えるよりもずっと霊的な感覚ですね。日本も西洋も関係なく、科学が発展する前の人の世はかなりスピリチュアルなものでした。またその頃は対位法的な音楽が主軸としてあったので、厳格なその方法論と、盛んだった即興演奏という化学反応がファンタジックであったのかもしれません。


Feb 24, 202341:02
#85 なんでもできちゃう有能テレマン

#85 なんでもできちゃう有能テレマン

Today's List■ Telemann: Flute Sonata TWV 41:G9  Ⅰ Cantabile/ Ⅱ Allegro/ Ⅲ Affettuoso/ Ⅳ Allegro -- テレマン: フルートソナタ TWV 41:G9 Ⅰ 歌うように/ Ⅱ アレグロ/ Ⅲ 愛情深く/ Ⅳアレグロ


ハンブルグは、港湾都市というそうです。海に面していませんが、海に続く川に沿って栄えていました。交易が盛んだと文化も方々から集まってきやすく、40歳からハンブルグに腰を落ち着けたテレマンも、異国の文化や音楽に触れる機会が多かったのではないでしょうか。


さてテレマンが自ら刊行した雑誌「忠実な音楽の師」は隔週で出版していたらしいのですが、その中にはテレマン自身の新曲や他の作曲家たちの曲なども載せられた、購入を続けると長大な曲集になるというものだったそうです。そりゃあ、みんな買いますよね。さすがの商売上手です。

また、在庫リスクを避けるため、楽譜を出版する際には予約制を取り入れたことも有名です。画期的だし、強気。抜け目のなさに感心しますが、一方で『食卓の音楽』の予約客リストの中にはヘンデルの名前があったそうです。20歳の時に出会った年下のヘンデルは、その頃すでに名の売れた作曲家でした。テレマンがこれを出版したのは46歳の時。無名時代から26年も続いた友情を示すかのような予約名です。なんとまあ、ほっこりするエピソードでしょう…


Feb 16, 202331:13
#84 小宇宙感じた?クープラン②

#84 小宇宙感じた?クープラン②

※金井のPC設定ミスにより、竹森の声だけが非常に神秘的な響きになっております。聞きづらくなってしまったこと、ご容赦ください。申し訳ありません。

Today's List■ Francois Couperin: Pieces de Clavecin - 3eme Ordre "L'Espagnolette"/15eme Ordre "La Douce et Piquante"/ 2eme Ordre "Canaries", "Double des Canaries"/ 13eme Ordre "Les Rozeaux"/ 14eme Ordre "Le Roissignol en amour", "Double du Roissignol" -- フランソワ・クープラン: クラヴサン曲集 より 第3オルドル "スペインの娘"/ 第15オルドル "温和と辛辣"/ 第2オルドル " カナリ"、"カナリのドゥーブル" / 第13オルドル"葦"/ 第14オルドル"恋のうぐいす"、 "うぐいすのドゥーブル"

クープランの家は、代々サン・ジェルヴェ教会のオルガニストを務めていました。この教会はパリのマレ地区にあります。そして若くして仕えた太陽王、ルイ14世はあのヴェルサイユ宮殿を建てました。クープランがいかにフランスの中心地で生活していたのかがよくわかりますね。非常にニヒルな感性、人や生活の裏側を暴くような攻撃性を備えながらも、その音楽からはずっとある種の余裕を感じ続けさせられる、というのはこうした独特の絢爛と長閑が同居していた時代背景からくるものではないでしょうか。
第21オルドルには、自身の名を冠した"クープラン"という曲があります。自画像のようなこの曲はけして底抜けに「明るく」はありません。彼が何を思ってこの時代を生きていたのか、もしかしたら音楽ともども糖衣していたのか、誰にもわかりません。

Feb 02, 202339:41
#83 豊かなバロック、クープラン

#83 豊かなバロック、クープラン

Today's List■ Francois Couperin: Pieces de Clavecin - 11eme Ordre  Les fastes de la grande et ancienne Menestrandise 3e Act " Les Joungleurs, Sateurs et Saltimbanques"/ 18eme Ordre "Soer Monique"(Rondeau)/ 5eme Ordre "La Bandoline" (Rondeau)/ Concerts Royaux - 4eme Concert "Folrane" -- フランソワ・クープラン: クラヴサン曲集より 第11オルドル 偉大にして古き吟遊詩人組合の年代記 第3幕 "熊と猿を連れた曲芸師、軽業師と道化" /第18オルドル "修道女モニク" / 第5オルドル "バンドリン" / 王宮のコンセール 第4コンセール "フォルラーヌ"


バロック音楽というと、規則正しい音楽、というイメージがついて回るかもしれませんが、「当時は不可能なことが多かった」だけで、実はけっこう自由度が高いものです。

イマジネーション豊かなクープランも、色んな実験的な試みをしています。「王宮のコンセール」には続編「趣味の融合、あるいは新しいコンセール」という曲集があり、当時新しかったであろう、イタリア様式とフランス様式の融合を掲げています。

対照的に風刺の意味合いが強かったと言われる非常に世俗っぽい「偉大にして古き吟遊詩人組合の年代記」は、全幕本当に面白いタイトルがついていますので、ご紹介しておきましょう。

第1幕 吟遊詩人組合の名士と組合員
第2幕 ヴィエル弾きと乞食
第3幕 熊と猿を連れた曲芸師、軽業師と道化
第4幕 傷痍軍人 または吟遊詩人組合に仕えるかたわ
第5幕 酔っ払い、猿や熊がひきおこした混乱と潰走


なんだかわくわくしてきませんか?来週もこんなクープランのアイデアがいっぱいです。お楽しみに!

Jan 26, 202332:55
#82 カルメンの誘惑…R指定いらない?

#82 カルメンの誘惑…R指定いらない?

Today's List■ Bizet: "Carmen" Seguidille/ Intermezzo -- オペラ"カルメン" より セギディーリャ/ 間奏曲


初演時こそ大成功とは言えなくても、カルメンは少しずつ大衆に受け入れられ、ビゼーの死後間もなくから繰り返し上演されるようになり、ニーチェはこれを20回以上も観たと言われています。

最初の失敗の原因は、ジプシーやバスク人という、フランス人にとってはなかなかデリケートな人物設定もさることながら、ヒロインのカルメンのあまりに気が強く、またジプシーの象徴のような自由を求め続ける奔放な性格、舞台のタバコ工場など、内容が「上品ではなかった」ことから、なかなかすぐにはその世界に馴染める人が少なかったからだそうです。


しかしこれらはそのままこのオペラの魅力となっています。カルメンに人々が強烈に惹かれるのはその鋭い輝きがあればこそでしょう。オペラを見慣れた聴衆にとって、その悲劇性自体は言及するほどにショッキングなことではなかったようです。だって、カルメンのような人物が、長生きするわけありませんよね?勝手で短く、太い命だからこそ、美しいカルメンなのです。


Jan 19, 202324:31
#81 気分上げてこ!カルメンファンタジー

#81 気分上げてこ!カルメンファンタジー

Today's List ■ Borne: Fantaisie brillante sur Carmen -- ボルヌ: カルメン幻想曲


カルメン幻想曲といえばもう一つ有名なのがサラサーテ作曲のもので、まずはそっちをイメージする人も多いかもしれません。サラサーテの方は、ヴァイオリンのための曲です。

どちらもとにかくカルメンのインパクトの強さ、今なお頻繁に耳にするメロディーの数々にびっくりします。

このようなパラフレーズ的な曲は、どんな楽器でも音数がべらぼうに多いものですが、そもそもその音数に聴衆が混乱せずに楽しむためには、元のメロディーを見失わず、はっきりと把握してある必要があります。カルメンなら、曲が始まった瞬間から誰も迷わず、飾りに惑わされずメロディーを追うことができ、安心して演奏者の技巧に酔いしれることができます。人気が高いのも納得ですね。

Jan 12, 202328:04
#80【謹賀新年】バッハのカンタータで目覚めましょう

#80【謹賀新年】バッハのカンタータで目覚めましょう

Today's List■ J.S.Bach: Cantata BWV 140 "Wachet auf, ruft uns die Stimme" - 4.Zion hört die Wächter singen,Choral (Tenor):/ Cantata BWV 12 "Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen" - 1. Sinfonia/ Cantata BWV 208  "Was mir behagt, ist nur die muntre Jagd!" - 9. Schafe können sicher weiden, Aria (Soprano) -- J.S.バッハ: カンタータ 第140番 『目覚めよと、我らに呼ばわる物見らの声』 第4曲 シオンは物見らの歌うのを聞けり(コラール、テノール)/ カンタータ第12番『泣き、嘆き、憂い、怯え』第1曲 シンフォニア/ カンタータ第208番 『楽しき狩こそ我が悦び』第9曲 羊は憩いて草を食み(アリア、ソプラノ) 


明けましておめでとうございます!昨年もなんとか配信を続けられたことに胸を撫で下ろしつつ、新年を迎えました。今年も一層励んで参りたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。 厳かな気持ちで、初心に戻り、邪念を浄化させたい年明けには、バッハを聴くのが良いでしょう。 


ヴァイマール時代に勤めていたのは、「教会」と言ってしまったのですが、申し訳ありません、正確には「宮廷」です。 

この時代の作曲家(ほとんどの場合、兼オルガニスト)は大体、宮廷か教会かに雇われないと食べていけなかったのですが、バッハも職を求めて街を点々とし、教会カンタータを書き続けました。日常的な礼拝に、それだけ音楽が必要だった時代でした。都度、変更や楽器の差し替えなどが必要になってくるので、一回上演されたカンタータが全く同じ形で再演されることはまずなかったと言えるでしょう。 


ちなみにこのチャンネルで頻出する、フランス作曲界における重要なステータス「ローマ賞」の審査で若き作曲家たちに最終課題として与えられるのが、カンタータです。カンタータを作曲する(できる)こということが、どれだけ重要なこととされていたのかがよくわかりますね。

Jan 05, 202342:43
#79 悲願の?クリスマスソング

#79 悲願の?クリスマスソング

Today's List■ Fred COOTS: Santa Claus Is Coming to Town / Felix BERNARD: Winter Wonderland / Irving BERLIN: White Christmas -- フレッド・クーツ: サンタが町にやってくる/ フェリックス・バーナード: 素敵な雪景色/ アーヴィング・バーリン: ホワイト・クリスマス

雪が降ると外はしんと静かで、家の中では暖炉のもとで賑やかな団欒、という景色がクリスマスソングにある二つの代表的な音楽のタイプになるしょうか。そんな中で、「ウィンターワンダーランド」の歌詞では(日本語訳ではザックリとカットされてしまっていますが)、きっとこれから家族になる二人の、なんとも可愛いひとときが描かれています。この雪景色と窓の内側、恋人と夫婦の「ハザマ感」がチャーミングな一曲でした。

このチャンネルも二度目のクリスマスを迎えまして、お陰様で楽しく、時に竹森は体調不良と、金井は眠気と闘いながら、音楽を続けて来られました。リスナーの皆様がいらっしゃらなかったらとっくに放り出していたと思います。今年もありがとうございました。
来年もこんな感じで、ゆるりと真面目にやっていけたらという所存でございます。
どうぞこれからもご贔屓に、よろしくお願い致します。また年明けにお会いしましょう。素敵なクリスマスを、そして良いお年を!
Dec 21, 202232:24
#78 昼ドラ的結婚話、シューマン②

#78 昼ドラ的結婚話、シューマン②

Today's List■ Schumann: 3 Romances op.94 -- シューマン: 3つのロマンス op.94

当時ライプツィヒがドイツの音楽の中心地であったのは他でもないシューマンの功績も大きいでしょう。文学青年でもあったシューマンがライプツィヒで創刊した「新音楽時報」の先鋭的な姿勢は、業界人も含め聴衆の音楽水準を高めることになりました。
シューマンの音楽は内向世界の印象が強いですが、彼自身は社会への興味、他人との交流への熱意を失うことはなかったようです。自分以外の作曲家の音楽もよく聴いては意見を発信していましたし、若い頃は道すがら現役の小説家と意気投合して一緒に旅をしちゃったりする人懐っこさも持っていました。
子どもに囲まれて幸せな時間もありながら、ドレスデンでのシューマンの憂鬱を考えてみると、親い他人と音楽や文学への認識に齟齬があったり、誰かが自分の水準について来られなかったりということは、彼にとっては淋しく、ストレスのかかることだったのではないかということが推しはかられます。そんな体験が彼の孤独を際立たせ、音楽を更に精神的な作業へとしていったような気がしてきますね。

Dec 08, 202240:51
#77 シューマンに同調すると立てなくなっちゃう

#77 シューマンに同調すると立てなくなっちゃう

Today's List■ Schumann: Fantasiestucke op.73 -- シューマン: 幻想小曲集 op.73


シューマンのあまりにも有名な人生を追っていくとそれは本当に目まぐるしく、幸せな時期もあれば不幸な時期もあったことが易々と伺えますが、素晴らしい作品を残した芸術家たちは、結果幸福に生きたのだろうかということを想像すると、かなり難しい人が多いと思います。

シューマンは若い頃梅毒に感染したことを皮切りに、元々不安定だった精神をどんどん病み、精神障害を次々に抱えては倒れたり自殺を試みたりしています。そういう事件だけ羅列していくと、嗚呼気の毒な人だと誰もが思う悲惨な人生なわけですが、彼の音楽にはそういう性質が色濃く現れて(というかそのものと言ってもいいかもしれない)いるので、作品の持つ価値にはそのようなたくさんの不幸が不可欠なものとして含まれています。


人は幸せになるために生きるのだ、ということは当たり前の通説として世界に蔓延っていますが、幸せのための奴隷になってしまうと、芸術家は価値を残せなくなっていくものかもしれません。

(と、いう持論を展開して、金井はいつも結婚しろだの子どもを生めなどと言って幸せを願ってくれる親切な人々の言い分をぐちゃぐちゃに掻き回して生きています)

Dec 01, 202238:42
#76 ありがとう、ヴァニエ夫人!ドビュッシー②

#76 ありがとう、ヴァニエ夫人!ドビュッシー②

Today's List■ Debussy: Mandoline/ Paysage sentimentale/ Deux Romance - 1. l'ame evaporee 2. les cloches -- ドビュッシー: マンドリン/ 感傷的な風景/ 2つのロマンス - 1.そぞろな悩める心 2.鐘


2つのロマンスの1曲目の邦題は「そぞろな悩める心」でした。もう少し粘って調べればよかった…


ドビュッシーはパリ音楽院でオルガンの授業に出たところ、「その執拗に灰色の音楽」に耐えきれなかったらしいのですが、オルガンだから重々しいのはわかるとしても、灰色ってどういうことだと思ったら、どうも同じ調がずっと続いていくことが彼にとっては灰色と感じたということのようです。

転調こそドビュッシーの音楽らしさと言えるくらい彼の曲は転調まみれ、また、さまざまな教会旋法、半音階全音階、異国の音階、こういった響きにおけるあらゆる要素が盛りだくさんで、それらによって複雑な「色彩」が無限に生まれ出されています。

ということは?

そりゃ、音程を取るのは難しいに決まってるんですよねぇ…


作曲初期の段階でこれだけ色彩豊かな音楽を書いていたわけですから、当然後天的に学んだというより、それよりずっと前からそういう音の色彩感覚は彼の中でずっと息づいていたのでしょうし、もしかしたらドビュッシーはこの世に無かった音楽を抱えて生まれてきたのかもしれません。



Nov 16, 202235:11
#75 ドビュッシーと詩

#75 ドビュッシーと詩

Today's List■ Debussy: Nuit d'etoiles/ Beau soir/ Fluer des bles -- ドビュッシー: 星の輝く夜/ 美しい夕べ/ 麦の花


は、話が…飛んでしまって…

なぜ一度、関係のないボードレールが登場したのか謎な会話で終わってしまいました。

ドビュッシーが幼年期通っていたフルールヴィル夫人の家にも出入りしていたと考えられるポール・ヴェルレーヌと、青年期に出席していたサロン「火曜会」の主催者ステファヌ・マラルメは、ランボーと共に「象徴派」を代表する詩人としてよく名前を挙げられますが、その先駆者となった詩人が、シャルル・ボードレールです。

つまり、フランス音楽の歴史を俯瞰で見た時、ドビュッシーは間違いなく一つの起点として機能しており、ドビュッシーに多大な影響を与えられたその後の名だたる作曲家たちとの関係を考えると、そのポジションはむしろ文学運動におけるボードレールの立場に近いのでは…?というわけです。

音楽の時代感は文学や絵画に少し遅れて動きをなぞっていくということはよく言われるのですが、だからといってボードレールが先駆けとなった象徴派の思想とドビュッシーの音楽的な思想が一致するかというと、フランス語の詩を原語で理解できるわけでもなし、なんとも言えません。そもそもプレイヤーの視点から見ると、象徴派か印象派か、などドビュッシーの音楽をカテゴライズすること自体がなんかちょっと違和感だなあ、という感じです。



Nov 11, 202231:57
#74 ラジオ体操風を防げ!ドップラー②

#74 ラジオ体操風を防げ!ドップラー②

Today's List■ Franz Doppler: Airs Varaque op.10 -- フランツ・ドップラー: ヴァラキア地方の歌

「染みる」と「アガる」を両方兼ね備えたドップラーの音楽は、一貫してコンサートで演奏することを目的として作られています。芸術はしばしば「芸術家のための」芸術になっていると揶揄されることがありますが、ドップラーは「聴衆のための」音楽を作り続けた人物でしょう。

先週の「ハンガリー田園幻想曲」も、この「ヴァラキア地方の歌」も、聴いていると、暗いステージでフルーティストがスポットライトを浴びて、フルートをキラキラ光らせながら、華麗に演奏している様子と、それをうっとりと眺めながら聴き入る観客で埋まったコンサートホールが目に浮かんできますよね?
そんなことを考えていると、「聴衆のための」と「演奏家のための」は同じ意味のような気がしてきますね。ドップラーは「自分のための」と「聴衆のための」の音楽にはそんなに差異がなかった人物だったのかもしれません。

Nov 04, 202235:59
#73 クズには弾けないドップラー

#73 クズには弾けないドップラー

Today's List■ Franz Doppler: Fantasie Pastorale -- フランツ・ドップラー: ハンガリー田園幻想曲 


金井のパソコンの殺人的な不調により1週間空いてしまいました。そういうこともあります!生ける屍になった金井は文章を書けそうにないので、竹森にバトンタッチ↓↓ 


フルートの名曲といえばこれ!というほどフルーティストにとってはオハコな一曲。 私竹森も高校生の頃、師匠のCDに収録されたこの曲を毎日毎日聴いては「いいわー素敵だわ痺れるわー」と思いを馳せながら通学路を歩いた思い出の一曲です。 ドップラーは2人兄弟。この曲を書いたのは兄のフランツ。 フランツ・ドップラーは、オーボエ奏者であった父親からフルートの指導を受けます。18歳でブダペスト歌劇場の首席フルート奏者に就任しました。その後はウィーン宮廷歌劇場の首席フルート奏者から首席指揮者の地位へと昇り詰め、1864年から1867年までウィーン音楽院のフルート科の教授も務めました。 演奏家が作った曲ならではの技巧的な響き、来週もお楽しみに!

Oct 27, 202235:30
#72 冬の風感じ始める後半、10月の詩

#72 冬の風感じ始める後半、10月の詩

Today's List■ Massenet: Poeme d'Octobre - no.3 Qu'importe que h'hiver/ no.4 Rose d'Octobre/ no.5 Pareils a des oiseaux -- マスネ: 10月の詩 - no.3 気にすることがあろうか 冬が/ no.4 10月のバラたち/ no.5 鳥たちのように


あっという間に終わってしまいましたね。10月のように、この曲も短い…


マスネはオペラで大成した作曲家なので、メジャーな曲には独特のあざとさがありますが(オペラは映像が普及する前から脈々と続く大衆のためのエンターテイメントなので、あざとくないとやっていけません)、このような小さな曲では、急に素の感性が垣間見えるようです。

パリ音楽院で教鞭を取っていた18年もの間、マスネは夏のバカンスを旅に費やしました。旅とはあらゆる景色との別れの繰り返しなのでしょう。歌々には悲壮感のない切なさが自然な感覚としてしっくりと馴染んでいます。その素敵さが若者に伝わることを信じて、また他にも演奏していきたいです。


しかし…猫の声が入り込むのはいつものことですが、今回はやたらとお腹の鳴る音が入っています。どっちのお腹が鳴っているんでしょうか…どうしたんでしょうか…


Oct 13, 202229:60
#71 めいっぱい享受せよ、10月の詩

#71 めいっぱい享受せよ、10月の詩

Today's List■ Massenet: Poeme d'octobre - Prelude/ no.1 Automne/ no.2 Les marronniers -- マスネ: 10月の詩 - プレリュード/ no.1 秋/ 栗の木々


詩というのは独特の文化で、言語問わずいろんなものを読んでみないとニュアンスを感じ取ることはなかなか難しいものです。言葉を操るジャンルでありながら、事象よりも肌感を表現するものであることが大きな要因ではないでしょうか。その代わり、世界中の詩は保有する国が違っても、海のように繋がっている世界です。流れ、潮目が現れ、影響を与え与えられ、温度が変動し、しかし海水である。まずは海水を舐めるところから始めないといけませんが、涙に近いとわかると、どの詩も言語の弊害をそっと脇に寄せることができるようになっていきます。

とはいえ、そもそも受け取り手の「完全に理解する」という錯覚を最も嫌うのが詩人たちなので、まあ、母国語でも、外国語でも、わからなくていいんじゃないでしょうか。


音楽はもう少しわかりやすいです。聴衆にとっては語法が違っても誤訳がないからです。だから詩に音楽がつくと、このように、肌感が立ち上ってくるわけですね。外国人の聴衆に優しい、それが歌曲。


詩を書いたポール・コランの作品には他にもチャイコフスキー、フォーレ、シャミナードなどが曲をつけています。なおアール・デコを代表するアーティストのポール・コランとは別人です。




Oct 06, 202228:09
#70 SNS時代に赤とんぼ的感性は成立しない

#70 SNS時代に赤とんぼ的感性は成立しない

Today's List■ 草川信(作詞: 中村雨紅): 夕焼け小焼け/ 中田喜直(作詞: サトウハチロー): 小さい秋見つけた/ 山田耕筰(作詞: 三木露風): 赤とんぼ


音楽を学ぶにはその国の言語を学ばなければいけないということはよく言われることですが、日本でもやはり日本語の曲は日本語の歌詞のイントネーションとフィットするように音型が組まれています。要するに「詞を口に出して読む」のと「歌う」ことに差異が生まれづらい作りになっています。それが他の音楽的な要素と合わさってうまいことハマると、人々の頭によく残る曲となり、長く愛されるそうです。

その方程式はポップスでも例外ではなく、歌謡的な曲ではこの条件をクリアしている曲が大ヒットに繋がってきました。忙しいあなたに暇な時間ができたら、昔から好きな曲を口ずさんで、メロディーを廃してもう一度その歌詞を口に出してみてください。アラ不思議、それは歌う時とそんなに変わらない抑揚になることでしょう…



Sep 29, 202233:18
#69 夏の終わりは青春の終わり?

#69 夏の終わりは青春の終わり?

Today's List■ 井上陽水: 少年時代 / 森山直太朗: 夏の終わり


昨今、多くのJpopの歌手たちが「たちつてと」行を軒並み「つぁつぃつぅつぇつぉ」 と発音するのは洋楽に寄せたいからなんでしょうか。そんなに寄ってないしひたすらに意味がわからなくなるだけなので、ならもういっそ英語で歌っちゃえばいいのに…などと思ったりしませんか。

井上陽水さんも森山直太朗さんも、日本語を美しく発音して音楽にする方です。発音そのものが音楽になるように計算されているので、情景がVR的に場を支配してきます。脳内を彼らの情緒でハックされる感じですね。もしもあなたが一夏丸々眠り続け、目が覚めた時には秋が深まっていたとしても、こんな音楽を聴いたら、自分は確かに夏を経験したのだと信じてしまうかもしれません。


竹森のコンサート情報はこちら!

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フルートカルテットコンサート『アートの世界』

9月25日(日) 13時30分開場/ 14時00分開演

@ムラマツ・ホール

(〒160-0023 東京都新宿区西新宿8丁目11-1 2F)

¥3,000(予約制)

チケット予約は竹森のinstagramからDMください!

→ https://www.instagram.com/yukie.foretdebamboo/


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Sep 20, 202240:33
#68 ヴァイオレンス&アディオス

#68 ヴァイオレンス&アディオス

Today's List■ Piazzolla: Violentango/ Adios Nonino -- ピアソラ: ヴィオレンタンゴ/ アディオス・ノニーノ


金井です。このレコーディングの後すぐ爪を切りました。が、今既にもうだいぶ伸びてきて、すぐにでもまたグリッサンドができそうです。

昔、私達がさして仲良くもなかった頃、「最近爪が伸びるのがすごく早くて」とぼやいたら、竹森に「それは爪が伸びるのが早まったんじゃない、時が経つのを早く感じるようになっただけだ」と即答されてハッとした思い出があります。竹森は時々こういう真理を突いてきます。今年の夏は短かった。いや、年を取って短く感じるようになった。アディオス夏、アディオスピアソラ、また来年。

ところで夏になるとピアソラッピアソラッと言い出す私たちですが、ブエノスアイレスは今が一番涼しい頃みたいです。南半球にあるので…


Sep 08, 202229:38
#67 一年ぶり、再びのピアソラ

#67 一年ぶり、再びのピアソラ

Today's List■ Piazzolla: Obilivion/ Libertango


お休みが2週間になってしまいました。夏は忙しい忙しい。となっているうちにちょっと涼しくなってきてしまったので時期を逸したかと思っていましたが、今日はちゃんと暑いのでピッタリですね。うん、でもやっぱり暑いのイヤですね。


さてやっぱり燃えるピアソラ。ピアソラは演奏が奏者や編成によって十人十色が過ぎるので、「踊れないタンゴ」とのディスが有名ですが、そうだ、ダンスだ、タンゴを見よう、と原点に立ち帰ろうとしてみると、なんとタンゴも様々そして様々また様々なんですねぇ。


ところで、昨年は生誕100年のメモリアルイヤーだったので、たくさんのCDが発売されました。

洗練されたデザインで優勝なのは、ユニバーサルミュージックから発売されている「リベルタンゴ〜ピアソラ・フォーエバー」です。赤とも茶色とも見える色味と、タンゴとバンドネオンを簡素に表現したイラストは秀逸でした。ちょっとタイトルがダサいですけれども。

同じくユニバーサルミュージックから、「エル・タンゴ」もよかった。レトロな油画風と現代的なフォントの組み合わせがアンバランスで素敵。

こんなふうに、デザインのラインナップも参考になります。どれもくすんだ色味だ…あんまりパキパキ演奏するとよくない…とか、すこし傾いた感じがいいらしい…ああやっぱり基本的にステップは体重移動だから…でも体幹が大事だろうからリズムは…とかね。


うーん、こうしてまた別の色のピアソラを一つこの世に増やしてしまった。



Sep 01, 202234:00
#66 【御礼】リサイタルありがとうございました!

#66 【御礼】リサイタルありがとうございました!

8/6に向けての準備で配信がグッダグダになっていましたが、ここらあたりて立て直していこうと二人で話し合っています。

金井は足を引きずり、竹森は(恒例の)調子を崩しと、満身創痍な状態ですのでちょっと時間はかかるかもしれませんが、素敵な曲はまだまだいっぱい、この世は宝箱。

満身創痍とはあまり関係なく、二人の会える時間が作れず、ひとまず来週の配信はお休みです。


コロナ禍で演奏を聴いて頂く機会がなくなってからの、久しぶりのリサイタルで本当に嬉しかったです。

たくさんのお花、贈り物、メッセージ、ありがとうございました。

今後ともよろしくお願い致します!

Aug 12, 202218:58
#65【遅くなりましたごめんなさい】【ほぼトーク】祈りの心とオレンジジュース

#65【遅くなりましたごめんなさい】【ほぼトーク】祈りの心とオレンジジュース

リサイタルの詳細はこちら! ばんばん予約してね!お友達も誘ってね!

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【竹森ゆきえ 金井裕 デュオリサイタル vol.1】

8月6日(土) 18:30開場 19:00開演

[会場] ムジカーザ(代々木上原駅東口より徒歩2分)

[チケット] 一般¥4000 学生¥2000

・STORES(電子チケット)→ https://yymusic.stores.jp/

・メール予約 → yu.yukie0125@gmail.com

twitter にQRコードも貼ってあります。 → https://twitter.com/YY_MusicChannel

DMもOK!

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Today's List■ Bach/Gounod: Ave Maria -- バッハ/グノー: アヴェマリア


発表会…終わってしまいました。スケジュールは押しに押され、よくわからない日での更新となっております。申し訳ありません。


アヴェマリアは有名な曲がいくつもあって、色んな作曲家が書いているので、アヴェマリアだけを集めた回を作りたかったのですが、フライングしてしまいましたね。無計画で進んでいると朧げにある計画を消費していかないといけなくて、結局手持ちのプランを失っていきます。悲しい。


さて週末はリサイタルですよ!チケットは購入しましたか?

ここ数週間のグダグダは全部リサイタルの為と言って良いでしょう。

刮目せよーー!

Aug 01, 202230:29
#64 自分を律するのって自分だよね

#64 自分を律するのって自分だよね

リサイタルの詳細はこちら! ばんばん予約してね!お友達も誘ってね!

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【竹森ゆきえ 金井裕 デュオリサイタル vol.1】

8月6日(土) 18:30開場 19:00開演

[会場] ムジカーザ(代々木上原駅東口より徒歩2分)

[チケット] 一般¥4000 学生¥2000 

・STORES(電子チケット)→ https://yymusic.stores.jp/ 

・メール予約 → yu.yukie0125@gmail.com 

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Today's List■ Handel: Largo-Ombra mai fu -- ヘンデル: ラルゴ(オンブラ・マイ・フ)


体型って不思議なもので、一概に「太っている」「痩せている」とは表現できないことが多いですよね。体のどこかの肉を、どこかに移せることができたら、割と文句ないのに…という標準体型の方は珍しくないのではないでしょうか。

また音楽家の場合はややこしくて、必ずしも「肉がある」ということはマイナスに働くわけではありません。良い音のためにはある程度の体の重さが必要だったり、またその逆もあります。人によって、また楽器によって「音楽のために」ベストな体型は異なってきますので、まあ…調子悪くないしな。などと思うとサクッと容姿の理想からは目を背けたりします。


「音楽のため」であっても「容姿のため」であっても、「太るため」であっても「痩せるため」であっても、兎にも角にも、自分を律していかなければならない、そんな人生の真髄を竹森はポロリと口から溢したのでありました。

Jul 23, 202228:11
#63【ほぼトーク】盛り上がってはいけない親の話

#63【ほぼトーク】盛り上がってはいけない親の話

リサイタルの詳細はこちら! ばんばん予約してね!2階席解放させてね!

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【竹森ゆきえ 金井裕 デュオリサイタル vol.1】 

8月6日(土) 18:30開場 19:00開演 

[会場] ムジカーザ(代々木上原駅東口より徒歩2分) 

[チケット] 一般¥4000 学生¥2000 ・STORES(電子チケット)→ https://yymusic.stores.jp/ ・メール予約 → yu.yukie0125@gmail.com twitter にQRコードも貼ってあります。 → https://twitter.com/YY_MusicChannel 

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 Today's List■ 大江光: ノクターン -- Hikari Oe: Nocturn とはいえ、どこのご家庭にも何かしらの確執はあることでしょう。 私達はお互いがお互いの親のエピソードに驚愕し合う奇妙な関係ですが、お互いに親を心底からは憎めないことを知っています。人は親を選べないのと同じように、子どもも選べませんから、子どもが音楽家になってしまって、親の方が気の毒なのでしょう。アーメン。


Jul 14, 202227:40
#62【トークのみ】「ありがとう」と「ごめんね」の適度な頻度は?

#62【トークのみ】「ありがとう」と「ごめんね」の適度な頻度は?

リサイタルの詳細はこちら! ばんばん予約してね!お友達も誘ってね! 


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【竹森ゆきえ 金井裕 デュオリサイタル vol.1】 

 8月6日(土) 18:30開場 19:00開演 

[会場] ムジカーザ(代々木上原駅東口より徒歩2分) 

[チケット] 一般¥4000 学生¥2000  

・STORES(電子チケット)→ https://yymusic.stores.jp/ 

・メール予約 → yu.yukie0125@gmail.com

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竹森がハマっている方はこちらでした。

 雨穴さん↓↓ 

https://www.youtube.com/channel/UChuwE7hMjONeLU54uC8Vigw 



結局年間計画を立てられなかった皺寄せがまさに今来ています。どうしていい年した大人が二人もいるのにまともな計画が立てられないんでしょうか。もうさっぱりわかりません。

Jul 07, 202226:15
#61 氷山の一欠片だけでもプーランク

#61 氷山の一欠片だけでもプーランク

Today's List■ Poulenc: Francis:Les chemins de l'amour/ 15 Improvisations  no.15 "Hommage a Edith Piaf" -- プーランク: 愛の小径/ 15の即興曲 第15番"エディット・ピアフを讃えて"


15の即興曲はプーランク自身のお気に入りのピアノ曲でもありました。数多ある曲の中でも、非常に「プーランク的」な匂いがする曲集です。


プーランクは後年、若干資金繰りに苦労した時期もありますが、生まれから基本的にブルジョワです。

彼の音楽を聴いていると、都会育ちの裕福な者の持つ、気負いのない洗練されたセンス(しかし貴族的ではない)というのは凄まじいものがあると圧倒されます。


ピアノ曲、器楽曲においてコラージュ的な印象を与える音楽の作りはモーツァルトを彷彿とさせます。その場の思いつきのような、それでいて自然の中に内包され、必然と偶然を曖昧にさせる、奇妙なバランス感覚は常にリスクと隣り合わせであり、大胆で、思想や苦悩よりも才能そのものを見せつけてくるのです。実際プーランクはモーツァルトを敬愛していました。この二人は音楽史上において最も流れるように、あらかじめ虚空に存在していたものを書き写すように音楽を書いた作曲家だといえるでしょう。



Jul 01, 202238:04
#60 チャイコフスキー嫌いな人、たぶんいない

#60 チャイコフスキー嫌いな人、たぶんいない

Today's List■ Tchaikovsky: Souvenir d'un lieu cher 1.Mdetitation 3.Melodie -- チャイコフスキー: なつかしい土地の思い出 1.瞑想 3.メロディー

1859年にアントン・ルビンシテイン主導でロシア音楽協会が創設され、ルビンシテイン兄弟によって立て続けにサンクトペテルブルク音楽院、モスクワ音楽院が創設されるまで、ロシアもまたオペラが主流の音楽後進国であったそうです。ここからチャイコフスキーが現れ、流れがぐっと変わってきます。
西欧の音楽を学んだアントン・ルビンシテインの音楽教育の革命とその弟子であったチャイコフスキーの功績は明らかなものですが、ロシア5人組との対立はしばしば語られる歴史でもあります。チャイコフスキー自身は5人組と不仲ということはなかったようですが、それを抜きにして例えば何も知らずに聴いたとしても、私たちはそれぞれの音楽から紛れもないロシアを感じることができ、根本的な隔たりは無いように感じられます。

そんな中でもチャイコフスキーの音楽の、人を選ばず惹きつけて離さない、圧倒的で確かな美しさは、歴史がどんな流れを辿ったとしても色褪せることはないでしょう。


Jun 23, 202245:33
#59 【fl ソロ回】フェルー、知ってる?

#59 【fl ソロ回】フェルー、知ってる?

Today's List■ Ferroud : Trois Pieces -- フェルー:3つの小品


絶対に落としたくないという意地だけで録りあげ、本日を迎えました。


フェルーの交響曲を聴いた裕ちゃんが、

交響曲はちょっとストラヴィンスキーっぽいなと思って、シュミットが管弦楽法でストラヴィンスキーに影響与えたらしいから、フェルーもそういう感じかなって思ったよ!

と教えてもらったので、聴いてみたらなるほど、ストラヴィンスキーっぽおい!

というか、シュミットに習っていたとはいえ大学は理系に進んでいるのにこの才能は凄まじいのでは…(嫉妬)


36歳の、これからという時に交通事故によりお亡くなりになっているので、もっともっと長生きしてもらって、彼の作品を聴きたかった心持ちです。


さて、皆さんは【推し】をお持ちでしょうか。

推しってなぜか布教したくなる。なぜなのだろう。


今週のYYMusicChannel、どうぞお楽しみください。

本日は竹森がお送りいたしました。

Jun 16, 202237:28
#58 マスネ、甘美な旋律

#58 マスネ、甘美な旋律

Today's List■ Massenet: Elegie/ Meditation マスネ: エレジー/ タイスの瞑想曲 


【訂正】「〜の風景」というタイトルが続くのが交響曲と言っていましたが、「交響曲」ではなく、「管弦楽組曲」です。

オーケストラの作品であるということは同じなのですが、そうですね…交響曲というのは形式がかなり厳密なものなので、組曲とは性質が異なります。マスネ自身が「自分には交響作曲家としての気質はないと考えている」と言っているので、あんまり許されていい言い間違いではなかったです…ごめんなさい。


「タイスの瞑想曲」の後、タイスはキリスト教信者となり全財産を燃やしてアタナエルについていき、砂漠の向こうの修道院に向かうわけなので、宗旨替えは人生をまるっと変えてしまうことがよくわかります。この瞑想曲における「瞑想」は、自身の内面に潜り、自身と対話するというより、神との邂逅、そして救済というニュアンスが強いかもしれません。


見方によっては…というか…普通に…アタナエルが余計なことをしなければ(純粋な善意から行動していたならともかく…)タイスは聖女なんかにならず長く生きたはずですが、息絶える前にタイスはアタナエルに感謝し、天使に迎えられて逝きます。タイスにとってはハッピーエンドのようです。宗教というのは本当に不思議なものですね。


Jun 09, 202243:56
#57 【ほぼトーク】謎の曲、爆誕

#57 【ほぼトーク】謎の曲、爆誕

Today's List■久石譲: もののけ姫 より 戦いの太鼓 -- Joe HISAISHI: The Battle Drums from Princess MONONOKE


タンギングとは、タン/タング、つまり舌の使い方、その技術を指す言葉です。発音のコントロールの仕方といえばわかりやすいかもしれません。私たちが言葉を話す時、舌を使って発音していますが、その種類は数えきれないほどのものです。フルートも音を発する時、舌を使って様々な種類の音の立ち上がりを使い分けて表現しています。フルートだけでなく、管楽器界ではタンギングという言葉がけっこう日常的に使われていて、タンギングが汚いとか綺麗とか言ったりします。


さて「戦いの太鼓」は、サントラの中では異彩を放っていた一曲で、実は一番名曲なのではと思ったのですが、なかなか難しいものがありました。別録りということもあったのかもしれませんが…フルートとピアノの編成に曲を落とし込むという作業に苦戦したことは過去にもありましたが、こんなに原曲からかけ離れたものが出来がったのは初めてでした!たくさん演奏したもののけ姫の中で、二人とも、間違いなく一番頑張って時間をかけた曲でした。今日で成仏されよ、私たちの謎の労力よ。


Jun 02, 202217:57
#56 滑り込み、5月の歌

#56 滑り込み、5月の歌

Today's List■ Mendelssohn: Lider ohne Worte op.62-1 "May breezes"/ Joachim Raff: Cavatina (6 Morceaux op.85) -- メンデルスゾーン: 無言歌集op.62-1「5月のそよ風」/ ヨアヒム・ラフ: 6つの小品 より「カヴァティーナ」


「5月のそよ風」は、小さな曲で、自然であっても隙なく張り巡らされた歌に、演奏する身としては結構気が張る曲です。こうしてちょこっとメンデルスゾーンを演奏をするたびに、ガッツリやりたいなぁ、という気分になるのですが、まだどれに取り掛かったらいいのかはっきりわかりません。


ラフは今でこそ名前をあまり聞く機会がありませんが、高名な指揮者のハンス・フォン・ビューローが、当時活躍していた作曲家の中で音楽の未来を担う作曲家として「ラフ、ブラームス、サン・サーンス、ラインベルガー、チャイコフスキー」の5人の名前を挙げるほど有名でした。ちなみに彼はバッハ、ベートーヴェン、ブラームスの頭文字を取って「3B」と名付けた人物とも言われていますが、ラフの生涯の友だったそうです。どれだけ才能を認められていたかがわかりますね。


May 26, 202229:50
#55 愛の喜び、悲しみ、そして?クライスラー

#55 愛の喜び、悲しみ、そして?クライスラー

Alt-Wiener Tanzweisen■ Kreisler: Liebesfreud/ Liebesleid/ Schön Rosmarin -- クライスラー: 愛の喜び/ 愛の悲しみ/ 美しきロスマリン


クライスラーがニューヨークで亡くなったことは先週お話ししましたが、アメリカ国籍を取得する前にフランス国籍を取得しており、パリに移住していた時期があります。そう、戦争ですね。この時代の作曲家は2回の大戦を経験しているので人生が波乱万丈です。若いうちはベルリンに拠点を置いていたようですが、ナチスドイツがオーストリアを併合したタイミングでパリへ、第二次世界大戦を機にアメリカに永住を決意します。

こういった類の話がクラシック音楽史にはよく出てきますが、想像してみても、実際のところどんな心境や感情で音楽家として生きていたのか、生々しく感じることは難しいです。この三部作は大戦と大戦の間に作られたようですが、曲想にどれくらい戦争の影響があったのかちょっと測りかねます。音楽は作曲家その人へ接触点ではあるかもしれませんが、人生を投影しているとは限りません。クライスラーの音楽は、その頃人々が聴きたかった音楽なのかもしれない、とこの三部作を聴いているとつくづく感じます。



May 18, 202237:33
#54 竹森からの大事なお知らせ

#54 竹森からの大事なお知らせ

Today's List■ Kreisler: Sicilienne et Rigaudon im Stile von Francois Francoeur/ Amy Beach: Romance -- クライスラー: フランクールの様式によるシシリエンヌとリゴードン/ エイミー・ビーチ: ロマンス


今回はニューヨークで没した二人を取り上げました。

クライスラーのシシリエンヌとリゴードンはタイトルに「フランクールの様式による」とついています。フランクールは17世紀の作曲家です。この「◯◯の様式の」とか「◯◯風の」などはよくあるタイトルで、作曲家が自分よりも古い作曲家への敬意が込めたオマージュであることが多いです。が、この作品は当初フランクールの作品であるということにした、クライスラー自身による偽作だったということです。最近、偽作だった…というシシリエンヌが続いていますが、なぜだろう…たまたまです。


エイミー・ビーチはあまり知られていない作曲家ですが、「ロマンチックな曲」といえば、という感じがして二人とも大好きです。ドイツロマン的な雰囲気の中に重くなり過ぎないフランス的な要素がチラつく聴きやすい作品なだけに、フルートとピアノのための曲がないことが残念!絶え間なく続くゆったりとした波を演奏するのは意外と大変で、二人して「おかしい、なんでこんなハードなの?」とぼやき、息を整え直し整え直し、深夜にレコーディングしました。…という経緯があり、配信がいつもより遅くなりました!



May 12, 202234:41
#53【トークのみ】リサイタルのお知らせっ!!

#53【トークのみ】リサイタルのお知らせっ!!

ええ、もう、何もかも頑張るんだ!!なーんて健康を削って身を捧げることができるのは20代まで。

大人になったら「何もかも」は「長期的に見たら、何もかも」にシフトです。

長期的に見たらこのチャンネルはすっごく頑張っていると思います。…よね?長い目で見よう?


リサイタル情報は追って詳細をお知らせします。というか多分これから言い続けます。耳にタコとか思わないでください。

…みんなファミリーだよね?

May 04, 202222:31